清く正しく美しいお姉ちゃん
うちのお姉ちゃんはよく
「普通に考えて〜やろ。」
という。彼女は自分の正義を押し付けてくる。
彼女は優しくて、視野が狭い。彼女には悪気はない。
彼女には想像力が足りない。
妹がどれだけ傷つくか考えない。
私はお姉ちゃんに敏感すぎる。良くない。
でも、トラウマだし、大好きだし、仕方ない。
お姉ちゃんはやさしい。
やさしい考え方しか知らない。
ひねくれた思考から、悩みや生きづらさを連想しない。
「ひねくれてんな。」
というだけである。
そしてまた私は傷つく。
幼稚園の時、よくお姉ちゃんと私は祖父にビブレに連れて行ってもらった。
当時私のブームはシール収集。シール帳に貼ったものを友達と交換する。
ぷくぷくシールや立体の中に液体が入っているシールなどをくれた友達には感激しすぎて、神様!とか思っていた。
「何か買ってあげるわ。」
おじいちゃんがそういう。
もちろん私はシールが欲しい。
しかし、私にはその希望を伝えることができない。
恥ずかしいわけではない。
側に姉がいるからである。
姉はいつも通り私の耳元でこう囁く。
「エンリョしいや?」
姉は立派である。不必要なものをねだってお金を使わせてはならないと心得て、妹にも教育していた。私はこういう状況に立たされる度にもやもやしていた。
あの時は言葉にできなかったけれど、
・祖父は孫に何かを買ってあげることで得る喜びがある
・私はシールが欲しい
・遠慮より素直に買ってもらって喜ぶ子供の方が可愛い
・シールは大人からすると安い
以上のようなことを何となく分かっていて、我慢することが無意味に感じられていたのだと思う。
しかし、自分たちのためにお金を使わすのは申し訳ないという武士のような姉には伝わらないだろうなと思い、伝えることはなかった。
ある日、両親と姉がハリーポッターの映画を見に出かけた。
小さい私にとってハリーポッターはホラー映画でしかなかったので、祖父母の家に預かってもらった。
遠慮しろ妖怪が側についていない私は無事筆箱を買ってもらうことができた。
満足感と共に、お姉ちゃんに怒られるな〜という少しの恐怖があった。
私の心配とは裏腹に、姉は何も言わなかった。ほっ。
次の日、ハーマイオニーが映画で使用していたネックレスが家に届いた。
そういうことかよ。
そういえば『ラブアンドベリー』も、『ちゃお』も、なぜか親ではなく姉に規制されていた。『ちゃお』に至っては、姉は私の年齢のときに買ってもらっていた。彼女が無駄だと気付いた時点で私が買ってもらえる権利はなくなるのである。理不尽。